選定メンバーによるオンライン対談

2020年2月25日に「一億人の投信大賞2019」を公表しました。一億人の投信大賞は2014年1月から一般NISA(少額投資非課税制度)がスタートをするのを機に、「普通の人が普通に長期投資で資産形成をするために使えそうな、より 良い投信を探そう」という趣旨で始めたものです。選定メンバー3人(『投資信託事情』編集長の島田知保、パワーソリューションズ取締役・高橋忠郎、LIFEMAP合同会社代表の竹川美奈子)で、アワードを立ち上げた理由、特徴、活用法などについて語り合いました(対談は2020年4月10日時点のものです)。

パッシブ投信も、アクティブ投信も
いっしょにスクリーニング・評価

竹川パッシブ投信とアクティブ投信を一緒にスクリーニングして、順位をつけているところも特徴としてあげられますね。

島田パッシブ投信とアクティブ投信を同じカテゴリで比較することで、資産クラスによってはパッシブ以上に目ぼしいアクティブ投信が存在しない場合は、パッシブ投信ばかりがカテゴリに残ることもあることを、そのままに示しています。

竹川例えば、主要株式4部門のうち、外国株式(除く日本)と新興国株式はスクリーニングで残っているのは大部分がパッシブ投信ですし、国内株式と外国株式(日本を含む)ではアクティブ投信が健闘していますね。

島田本来はアクティブ投信がそれぞれの投資哲学や個性を際立たせて鎬を削ることが理想だと思うのですが、海外への投資を行う投資信託などでは特に目立つことですが、投資テーマや投資地域の物色で、市場トレンドをサーフィンしていくような投資がまだまだ一般的で、息の長い資金流入を続けるアクティブ投信は稀な存在です。定番となるアクティブ投資信託が、育ってほしいという願いもこめられています。

竹川将来的には定量評価に加えて、上位に入賞した投資信託の定性的な情報(投資哲学や投資する会社を選定するプロセスや重視するポイント、ポートフォリオ構築でこだわっている点、運用するチーム・人など)を掘り下げてお伝えし、みんなでいい投信を育てていけたら、と私も思っています。が、手弁当でやっているため、もう少し時間をください(苦笑)。

島田最後に、もうひとつ特徴を挙げるなら、この賞は完全なボランティアによって行われ、続いているという点ですね。ロゴマークの使用料も、協賛や、セミナー開催の支援なども、一切受領していません。

継続的にスクリーニングで残る
投資信託は貴重な存在

島田スクリーニングによって毎年同じ投資信託が残るということは、例えばマネー誌などの視点からすると「顔ぶれが変わらず面白味がない」ので、話題にもなりにくいものです。

 でも、長期で付き合う相棒探しという視点では、毎年コロコロ変わらず、きちんと残ってくれる投資信託が増えることがとても大切だと思いますし、その点でこのスクリーニングは(改善の余地はあるかもしれませんが)一定の成果をあげていると思います。

 つみたてNISAが始まる前から資金が継続して流入する点をアピールしていたわけですが、結果としてつみたてNISA向けに登録されている投資信託もスクリーニングで残っています。確定拠出年金専用の投資信託を資産形成向けの公募投信として開放する運用会社が出てきたという業界の動きも歓迎すべき変化です。

竹川それはよい傾向ですよね。ただ、残念なのは運用会社のホームページをみても、その投資信託が銀行や証券会社などで販売されてるだけなのか、確定拠出年金兼用なのか、iDeCo(個人型確定拠出年金)でも取り扱いがあるのか、取り扱いがあるならどの運営管理機関(金融機関)で扱っているのか、といった情報を開示していない会社が多いことです。アワードを通して投資信託に関心を持つ個人がアプローチしやすい開示になることを期待しています。

高橋投信を選ぶときには、アクティブかパッシブかという運用スタイルの選択がよく議論になります。パッシブというのは市場全体に投資し市場全体平均に近い投資成果を得ましょうという運用スタイルであり、アクティブ運用というのは、独自のこだわりある銘柄選択を行う運用スタイルです。運用管理費用(信託報酬)という点では、パッシブ投信は個性がだしにくいためにコスト競争が激しい商品であり、ゆえに低コストです。

 一方、アクティブ投信は個性あるがゆえにパッシブに比較して高コストです。ただ、アクティブ投信には「社会問題を解決する会社に投資する」とか、「世界で成長し続けられる日本の会社に投資する」とか、「挑戦する経営者に投資する」とか、あるいは、そういったこだわりあるアクティブ投信をファンド・オブ・ファンズの形にして一本で世界に投資するといった個性があり、情報発信も多く、運用者との対話機会にも恵まれています。毎年の上位入賞ファンドやこれまでの全ノミネートファンド紹介ページからそういったアクティブ投信にも注目してもらえたらと思います。

島田特に国内株式の資産クラスでは、パッシブ投信よりずっと信託報酬が高いアクティブ投信でも、きちんと成果を出せるものがあることも証明されているのではないかと思います。こうした長期で信頼できるアクティブ投信が、もっと育ってくれることを期待しています。
一方で、たとえ運用成績が良くても、資金の出入りが安定的ではなく大きな投資資金が投資されたり解約されたりする投資信託は、順位が下がってしまうのですが、その結果一時的に大流行してもすぐに大量の解約にみまわれてしまうような売り方・買い方をされる投資信託ではなく、今まで注目されにくかった地味でも堅実な投資信託が見えてくることは、このファンド賞の目的を体現していると思います。

一億人の投信大賞をどのように活用してほしいですか

島田個人的には、この投信大賞では「スクリーニングに残ること自体が結構すごいことなのだ」という見方をしていただけるように努めたいと思っています。もちろん、その中でトップ3に入るのは、大変なことですが、それは評価する年末時点のマーケットの状況に左右される部分もかなりあります。

 日本株市場で中小型株が強い時期なのか、大きく下落していることでキャッシュが多かったりリスクを抑えてリターンを欲張らなかったりするタイプの投信が強い時期なのか、そうした相場環境によって上位の顔ぶれは変わります。ですから、順位に関心を持たれる以上に、ノミネートされた投信それぞれをリスペクトしつつ、個性を知っていただければと思います。運用会社の方にも、「何位」というだけでなく、ノミネートされた投信について、情報提供を工夫するなどして、大切に長期で投資家に向けて広めていただければ幸いです。

竹川毎年、順位はつけていますが、例えば、「一億人の投信大賞2019」でいえば、全体の約6000本の投信の中から2.5%に残っただけでも素晴らしいことです。単年度の順位だけに注目するのではなく、「継続性」をみていただきたいです。

 公式サイトで「全ノミネートファンド紹介ページ」では過去にスクリーニングで残った投信を、資産クラス別、運用会社別にすべてみられます。一億人の投信大賞がスタートした2013年から直近の2019年まで7年連続でノミネートされている投信も、18本あります。

高橋長期積み立て投資というと、インデックス投資でほったらかし、というイメージがありそうですが、7年連続でノミネートされ続けている株式投信は5本中4本がアクティブ投信です。これらの投信は、いずれも顧客と直接接点をもっており、情報発信量が多く、対話志向が強いと感じています。

竹川最後にこれから資産形成を始める人、すでに始めている皆さんにメッセージをお願いします。

高橋情報発信量が多く対話機会に恵まれている投信を保有することは経済や社会全体のこれからを知るいいリサーチツールになり得ると考えています。資産形成だけを目的に長期で投信積立をするのはしんどいかもしれないけれども、受益者個人がより遠くに認知を広げるツールとして投信を通じて得られる情報を積極的に活用する(「両利きの経営」における“知の探索”を個人に適用したイメージ)ようになるのであれば運用者と受益者の相互関係はさらに良好になり、それは長期積立のインセンティブにもなるとも思ったりします。

 おそらくここ数年で投信の運用会社が発信する情報は、文章やイラストによる説明が動画になり、PDF表示はWeb化され、オフラインのセミナーがオンラインでも参加可能に変わっていくなど、受益者がよりアプローチしやすいものにこれまで以上のスピードで変化していくものと思います。

島田将来に向けて投資を通じて資産を形成したいなら、そして投資そのものを趣味として時間を割くわけではないのなら、普通の方が最も間違ったことをしにくく、長期で多くの方がそこそこの結果を出す可能性を高める方法は、オーソドックスな資産に投資する投資信託を積み立てで購入し続けることだと思います。そのときに、どの投資信託を買おう?と迷う場合は、この投信大賞のスクリーニング方法を、ひとつの参考としていただければ幸いです。

竹川同感です。投資が趣味でも仕事でもない人にとって資産形成の土台づくりは投資信託の積み立てが有効だと思っています。

 ただ、株式市場は好調なときばかりではありません。大きく下落するときもあります。「一時的な下げに慌てずに、投資信託を保有し続けることで、そこそこのリターンを生み出すことはできる」「とはいえ、分散投資をしていても、一時的に大きく下落することはある。短期ではなく、長期的な軸で考える」ということを再確認した上で、コツコツ積み立て投資を「続ける」という選択をしてほしいと思います。そのためには、ルール化する、無理のない金額で始める、ということが大事ですが、仮に半分になっても持ち続けたいと思える投資信託をしっかり選んでおくこともとても大切だと感じます。「一億人の投信大賞」がそのヒントになると嬉しいです。

vol.01:「一億人の投信大賞」の特徴・活用法